「少し動くだけで息切れがする…」
「もう階段を上るのもつらい…」
肺気腫(慢性閉塞性肺疾患:COPD)は、進行性の疾患であり、その最もつらい症状である労作時の息切れ(呼吸困難)は、患者様の生活の質(QOL)を大きく低下させます。
「鍼灸は肩こりだけ」と思われがちですが
実は近年、COPDの息切れに対する鍼灸治療の有効性が
国内外の信頼できる研究機関で科学的に示されています。
今回は、鍼灸が肺気腫の症状にどのように役立つのか
そのメカニズムと期待できる効果を解説します。
科学的根拠:鍼灸が労作時の息切れを改善する
COPD患者様の息切れに対する鍼治療の効果は、
京都大学や明治国際医療大学など
複数の研究機関による共同研究で実証されています。
【研究で示された具体的な改善効果】
息切れの軽減: 鍼治療を受けた群は、偽の鍼(プラセボ)を受けた群に比べ、労作時の息切れの度合いが有意に軽減しました。
運動能力の向上: 息切れの指標となる6分間歩行試験において、鍼治療群で歩行距離が延びるという改善効果が確認されました。
この研究は、鍼灸がCOPDの主症状である呼吸困難を緩和し、運動耐容能(運動できる能力)を高める上で、有用な補完代替療法であることを示しています。
鍼灸が肺気腫(COPD)にお役に立てる3つの理由
肺気腫は肺の損傷が原因ですが、鍼灸は主に
「呼吸をサポートする身体の機能」
を改善することで、症状を緩和します。
1. 呼吸補助筋の緊張を徹底的に緩和する
COPD患者様は、息苦しさを補おうと、首の胸鎖乳突筋、斜角筋、肋間筋といった「呼吸補助筋」を酷使しています。
- 鍼灸の役割: 鍼は、これらの疲弊し、硬くなった筋肉に直接アプローチし、過剰な緊張を緩めます。これにより、胸郭(肋骨)の動きがスムーズになり、肺がより楽に膨らみやすくなる状態を作ります。
2. 全身の炎症反応を抑える(抗炎症作用)
COPDは、気道や肺の慢性的な炎症が関わる疾患です。
- 鍼灸の役割: 臨床研究では、鍼治療により、体内の炎症の指標(CRP、IL-6など)が減少することが報告されています。鍼灸の持つ抗炎症効果が、気道粘膜の腫れを鎮め、症状の緩和につながると考えられます。
3. 脳と自律神経を介した呼吸困難の抑制
呼吸困難を感じる際は、脳内の情動や自律神経に関わる中枢(扁桃体など)が興奮していることが知られています。
- 鍼灸の役割: 鍼の刺激は、この興奮した中枢を鎮静化させ、過剰な呼吸困難感を抑制する働きがあります。自律神経を整えることで、呼吸が楽になるだけでなく、ストレスや不眠の改善にも繋がります。
【重要】酸素飽和度(SpO2)の改善について
鍼灸治療は、残念ながら肺の器質的な損傷を元に戻すことはできません。そのため、酸素飽和度(SpO2)の改善も一律に保証できるものではありません。
しかし、効率的な呼吸ができるようになった結果として、6分間歩行中のSpO2の安定が認められた症例報告もあります。
鍼灸は、呼吸を楽にするための土台作りとして、患者様のQOL向上に貢献します。
最後に:西洋医学との併用で相乗効果を
鍼灸治療は、お薬や酸素療法といった西洋医学的な治療に代わるものではありません。
主治医の先生による治療を主軸としつつ、鍼灸を補完的な治療として併用することで、つらい息切れや呼吸困難を緩和し、より活動的で快適な日常生活を取り戻すお手伝いをいたします。
COPDの症状でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
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