「朝起きるのがつらい…」
「立ち上がると、目の前が真っ暗になってしまう…」
もし、あなたのお子様やご自身が、めまいや強い倦怠感、頭痛といった症状で学校や仕事に行けない状況が続いているなら、それは**起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)**かもしれません。
ODは身体を動かそうとする際に、自律神経の切り替えがうまくいかないために起こる病気です。
当院では、このODの根本原因と考えられている「自律神経の乱れ」に対して、科学的根拠に基づいた鍼灸治療を提供しています。
今回は、ODのメカニズムと、鍼灸がなぜ有効なのかを解説します。
1. なぜODになると朝起きられないのか?
ODは、病名のとおり「起立時(立ち上がり時)」の血圧・心拍数の調節機能が乱れることで発生します。
- メカニズム: 人が立ち上がると、重力によって血液が下半身に集中します。本来、ここで交感神経が働き、血管をギュッと収縮させて血圧を維持するのですが、ODではこの交感神経の働きが不十分です。
- 結果: 血圧が下がりすぎて脳へ送られる血液が一時的に減少し、めまい、頭痛、強い倦怠感といった症状が現れます。特に自律神経が不安定な午前中に症状が強く出やすいため、「朝起きられない」「午前中は動けない」という状況に繋がるのです。
2. 鍼灸治療がODの不調に有効な科学的根拠
鍼灸治療は、ODの根幹である自律神経の機能改善に役立つことが、複数の研究で示されています。
✅ 根拠① 自律神経バランスの客観的な改善
鍼灸治療がOD患者の自律神経活動に良い影響を与えることは、客観的な指標を用いて示されています。
- 論文等での示唆: 鍼治療が、心拍の変動を解析する心拍変動(HRV)のデータを改善し、過剰な交感神経の緊張を緩和し、回復に関わる副交感神経の働きを促進する効果が示唆されています。自律神経のバランスが整うことで、症状が改善に向かいます。
✅ 根拠② 症状の改善と生活の質の向上(QOL)
日本の鍼灸専門機関などによるOD患者への臨床報告では、具体的な症状の改善が示されています。
- 臨床報告: 薬物療法で十分な効果が得られなかったOD患者に対し、鍼灸治療を継続した結果、起床困難や腹痛といったOD症状の頻度が減少し、登校状況が改善した事例が報告されています。これは、鍼灸が患者様の日常生活の質(QOL)向上に貢献できることを示しています。
3. 城ヶ崎さくら並木の鍼灸院のODアプローチ
思春期に多い症状なので鍼治療が初めてという患者様が多い症状です。
しかし、OD論文の多くは海外のものであるため
日本で多く行われている鍼施術に比べて刺激量が多く
多くの日本人の中高生は鍼治療を拒否する傾向があったため
当院(しっかり刺激の鍼灸院)としては長年とても苦手な症状でした。
しかし2020年くらいから
・とても細い鍼(美容鍼のサイズ)を
・とてもゆっくり(はやく鍼をすると痛覚が発動しやすい)
・身体の奥深くまで刺激する
ことによって鍼の刺激が苦手な方に対応できるようになりました。
(ただし無刺激ではなく低刺激であり、少数鍼のため改善までの期間は長くなります)
当院ではこの優しいけど、しっかり深層筋や深くにある神経を刺激する技術を使って、
「不安定な午前中を乗り切れる身体の土台作り」を治療目標として、以下のアプローチを行います。
- 自律神経の中枢調整: 脳幹や視床下部といった自律神経を制御する中枢に影響を与える、頭部や背部の重要なツボへ刺激を施します。過敏になった神経を落ち着かせ、自律神経のブレーキとアクセルの切り替えをスムーズにする訓練を促します。
- 血流サポートの強化: 立ち上がり時の血圧調整に関わる首、肩、背中、そして手足のツボを用いて、全身の血流と体温を整えます。特に血管の収縮・拡張に関わる神経に働きかけ、起立時の循環機能をサポートします。
- 継続的なケア: 自律神経は急に改善しないため、症状の改善後も**「安定した状態を身体に定着させる」**ための継続的なメンテナンスをおすすめしています。
当院では、患者様やご家族のお話を丁寧に伺い、西洋医学の治療を尊重しながら、体質に合わせたオーダーメイドの治療計画をご提案します。
つらい朝の症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。