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股関節が「つまる・ひっかかる感じ」がするのはなぜか
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「股関節を曲げると、前のほうがつまる感じがして気持ち悪いんです」
「足を上げようとするとカクッと引っかかる感覚があります。痛いというより不快で」
「しゃがもうとすると股関節の前が詰まって、深くしゃがめません」
股関節の「つまり感」や「引っかかり感」は、
痛みとは少し違う症状として来院される方が増えています。
「痛みほどではないけれど、何か変な感じがずっとある」
「病院でレントゲンを撮ったが異常なしと言われた」
こういった方に向けて、この記事では
つまり感・引っかかり感の主な原因と、
鍼灸でアプローチできる部分をお伝えします。
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「つまり感・引っかかり感」は何のサインか
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股関節のつまり感・引っかかり感には、
大きく分けて「構造的な問題」と「筋肉・軟部組織の問題」があります。
構造的な問題とは、骨・軟骨・関節唇などの形状や損傷によるもの。
筋肉・軟部組織の問題とは、腸腰筋などの筋肉の緊張・短縮によるものです。
どちらも「股関節のつまり感」として感じられますが、
原因によってアプローチが変わります。
まず、それぞれの代表的な原因を見ていきます。
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原因①:FAI(大腿寛骨臼インピンジメント)
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FAIとは「Femoroacetabular Impingement」の略で、
日本語では「大腿寛骨臼インピンジメント」と呼びます。
股関節の骨(大腿骨頭・寛骨臼)の形状に問題があり、
特定の動きをしたときに骨同士が衝突(インピンジメント)して
痛みやつまり感が出る状態です。
◆ カム型(Cam型)
大腿骨頭の付け根が丸くなりすぎていて、
股関節を屈曲・内旋したときに骨が寛骨臼の縁に引っかかります。
若い男性・スポーツをしている方に多いタイプです。
◆ ピンサー型(Pincer型)
寛骨臼が深すぎるか前方に張り出していて、
大腿骨頭を過剰に覆い込んでしまう状態。
中年女性に多く、関節唇が繰り返し挟まれて損傷しやすくなります。
◆ 混合型
カム型とピンサー型が合わさったタイプ。最も多いとされています。
骨の形状の異常はレントゲンである程度確認できます。
ただし、実際にどの程度のインピンジメントが起きているかは、
MRIや動態評価(動きながら確認する検査)が有用です。
「レントゲン異常なし」でもFAIが関与している場合があります。
【FAIの特徴的な症状】
✓ 深くしゃがむ・脚を内側に回すと股関節前面がつまる・痛む
✓ 長時間座った後に立ち上がるとき、股関節がつまる感じがある
✓ 脚を大きく開いたり前後に振ったりするスポーツ動作でつらい
✓ 若い〜中年世代で、特にスポーツ経験がある
【FAIへの鍼灸アプローチ】
FAIの骨の形状そのものを鍼灸で変えることはできません。
ただし、FAIによって引き起こされる
・股関節周囲筋(腸腰筋・梨状筋・外旋筋群)の緊張
・関節包の硬さ
・繰り返しの刺激による炎症
これらには鍼灸が有効です。
筋緊張を緩め、炎症を鎮め、動きやすい状態を作ることで
「つまり感が軽減する」「痛みなく深くしゃがめるようになった」
という変化が期待できます。
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原因②:関節唇損傷(かんせつしんそんしょう)
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関節唇とは、寛骨臼(股関節の受け皿)の縁を取り囲む
軟骨組織のリングです。
股関節の安定性を高め、関節液を保つ役割があります。
FAIによる骨の衝突・繰り返しの負担・外傷などで
この関節唇が傷つくと、
・股関節前面のシャープな痛み・つまり感
・特定の動作(内旋・屈曲)での「カチッ・コリッ」という感覚やひっかかり感
・長時間の活動後の股関節の腫れ感・重さ
といった症状が出ます。
MRIの造影検査(MRArthrography)が最も正確な診断方法です。
通常のMRIでも確認できる場合があります。
レントゲンには関節唇は映りません。
関節唇の損傷が重度の場合は、
関節鏡手術が検討されることもあります。
軽〜中度の場合は、保存療法(運動療法・鍼灸など)で
症状をコントロールできることが多いです。
【関節唇損傷への鍼灸アプローチ】
損傷した関節唇を直接修復することは鍼灸にはできません。
ただし、
・関節唇への繰り返しの負担を軽減するための股関節周囲筋の緊張緩和
・炎症の鎮静
・股関節安定筋(深層外旋六筋・腸腰筋)の機能改善
によって症状を和らげ、日常生活の支障を軽減することが可能です。
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原因③:腸腰筋の緊張・短縮によるつまり感
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「つまり感」の原因として、
骨・軟骨の問題よりもずっと多く見られるのが
腸腰筋の緊張・短縮によるものです。
腸腰筋は股関節の前面を通る筋肉で、
硬く短縮すると股関節を屈曲したときに
「前が詰まる・引っかかる」という感覚が生じます。
完全な鑑別には専門的な評価が必要ですが、
目安としてお伝えします。
腸腰筋によるつまり感は、
✓ 車から降りた後など、長時間座った後に特に強い(腸腰筋が短縮した状態が続くため)
✓ 鼠径部を押すと圧痛がある
✓ 腸腰筋ストレッチをすると一時的につまり感が楽になる
✓ レントゲン・MRIでは骨・軟骨に大きな異常がない
という特徴があります。
FAI・関節唇損傷によるつまり感は、
✓ ストレッチをしても根本的な変化がない
✓ 特定の角度(屈曲+内旋など)でシャープな痛みや引っかかりがある
✓ MRIで関節唇・骨の形状の変化が確認される
という特徴があります。
「つまり感があるが、ストレッチや鍼灸で変化が出た」
という場合は、腸腰筋が主な原因である可能性が高いです。
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原因④:弾発股(だんぱつこ)
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弾発股とは、股関節を動かしたときに
「コキッ・ポキッ」という音や引っかかり感が出る状態のことです。
英語では「Snapping Hip」とも呼ばれます。
◆ 外側型弾発股
大腿筋膜張筋・腸脛靭帯が大腿骨大転子の上をはじく(スナップする)ことで起きます。
股関節の外側でコキッという感覚・音が出るタイプです。
◆ 内側型弾発股
腸腰筋腱が骨盤前面の腸恥隆起(ちょうちりゅうき)の上をはじくことで起きます。
鼠径部でコキッという感覚・音が出るタイプです。
◆ 関節内型弾発股
関節唇の損傷や軟骨の遊離体(関節ネズミ)によるものです。
関節の中で引っかかり感が生じます。
音や引っかかりがあるだけで痛みがない場合は、
急いで治療しなければならないわけではありません。
ただし、繰り返しの摩擦が関節唇・軟骨への負担になることがあるため、
放置して症状が悪化してきた場合は早めの対処をおすすめします。
外側型・内側型の弾発股は、
大腿筋膜張筋・腸腰筋腱の緊張を緩めることで
症状が改善することが多く、鍼灸が有効なケースです。
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鍼灸でのアプローチまとめ
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つまり感・引っかかり感の原因別に、鍼灸でできることを整理します。
◆ 筋肉・筋膜が原因の場合(腸腰筋・大腿筋膜張筋)
→ 最も鍼灸が有効。深部の筋緊張を直接緩め、つまり感の解消が期待できる
◆ FAI・関節唇損傷が原因の場合
→ 骨・軟骨の形状は変えられないが、周囲の筋緊張・炎症へのアプローチで症状を軽減できる
◆ 弾発股(外側型・内側型)が原因の場合
→ 緊張した筋腱を緩めることで、スナップが起きにくくなることが多い
◆ 東洋医学的な補足
股関節前面のつまり感には「足の陽明胃経(きゅうりょう・ふくりゅう)」、
股関節外側には「足の少陽胆経(かんちょう・ふうし)」のツボを
症状・体質に応じて使い分けます。
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まとめ
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股関節のつまり感・引っかかり感の原因、整理します。
・FAI(大腿寛骨臼インピンジメント):骨の形状によるもの。鍼灸で筋緊張・炎症にアプローチ
・関節唇損傷:関節唇への繰り返しの負担。周囲筋の緊張緩和で症状のコントロールが可能
・腸腰筋の緊張・短縮:最も多いパターン。鍼灸が最も直接的に有効
・弾発股:筋腱のスナップが原因。外側型・内側型は鍼灸での改善が期待できる
「つまり感があるが検査では異常なし」という方の多くに、
腸腰筋をはじめとする筋肉の問題が関わっています。
「痛みではなく不快感」であっても、放置すると関節への負担が積み重なります。
気になる方はぜひ一度ご相談ください。
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【城ヶ崎さくら並木の鍼灸院】
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※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を保証するものではありません。
強い痛み・可動域の著しい制限・外傷後の症状は、整形外科への受診をおすすめします。